トドダイビングについて(北海道・積丹)
毎年11月下旬頃になると、遠くロシアから北海道にトドがやってきます。ダイビングで水中のトドと一緒に泳げるのが、北海道・積丹の海です。
真冬の日本海に潜る…信じがたいかもしれませんが、そんなクレイジーなダイバー達もいるのです。中には東京など遠くから毎年はるばる通って来る人も。全ては、水中のトドに出会うためです。
野生のトドは危なくないの?
トドは大きいものでは3mを超えるものもおり、陸上でガーガー吠えている姿を見ると少し恐怖を感じるかもしれません。
しかし、水中で出会うトドは全く別物。陸上での重たそうな体からは想像もつかないほど、流線型のしなやかな体で前鰭(まえひれ)を使って猛スピードで泳ぎます。
ダイバー達にも興味津々で近付いてきて、ホバリングしながら顔を覗き込んできます。手を伸ばせば触れそうな距離です。あっという間に泳ぎ去ってしまうこともあれば、時には人間の動きに合わせてクルクル回りながら一緒にダンスをすることもあります。
筆者は何度も水中でトドと出会ってきましたが、ダイバーを襲うようなことは一度もありません。優しい目をしたとても穏やかな動物です。体側に調査のための焼印があれば、出生場所がわかります。
トドダイビングの素晴らしいところ
一度のダイビングで出会えるトドの数は大抵1~2頭で、見られる時間は数秒間ということが多いですが、過去には20頭以上の群れに遭遇し、長時間一緒にいられたこともあります。ダイバーの数よりトドの数の方が多く、イモ洗い状態のトドはものすごい光景でした。
真冬の日本海、透明度が高く深いブルーに映えるトドのシルエットは息を飲む美しさです。水中でトドと出会うことの感動は、なんとも形容しがたいものがあります。
自分が真冬の北海道の海の中でトドと一緒に泳いでいる、ということがあまりにも現実離れしすぎていて、大興奮している自分と、この寒い中自分は何をやっているのだろうと考えている、妙に冷静な自分を感じます。
一度会ったら忘れられず、どうしてもまた会いたいと思ってしまいます。もうこれは恋と一緒です。あの子達に会うためなら、たとえ5℃の水温でも、行き帰りの移動で、高波でボートが転覆しそうになっても、吹雪で顔面がとても冷たくても、どんなことでも耐えられてしまうから不思議です。
なぜそこまで魅了されてしまうのか、考えてもわかりません。とにかく、水中のトドは神としか言いようがありません。世界中いろいろなダイビングがあると思いますが、この感動はナンバーワンとも言えると思います。
トドに出会える時期や海況
積丹の水中でトドに出会えるのは11月下旬~3月頃までですが、一番出会える確率が高くなるのは12月下旬~1月上旬、ちょうど年末年始です。
時期が時期なので、海が時化てボートが出せないこともよくあります。そんな時は温泉に入り、みんなでお酒を飲んでおいしい物を食べて盛り上がります。それもまた楽しい時間です。
1月中旬になるとトド討ちが始まってしまうため、トドはなかなか姿を見せなくなってしまいます。トドは漁網にかかった魚を食べてしまうため、駆除が認められているのです。
しかし、トドが漁網の魚を食べてしまうのはなぜでしょうか?それはそれまでの乱獲により魚が減ってしまい、海中のトドの餌が減ってしまったからという可能性も否定できません。魚もいなくなり、トドもいなくなった海で、私達人間は生きていけるのでしょうか。
トドダイビングを通して、今一度自然の中における私達人間の在り方について、考え直してみるのも良いかもしれません。
人魚の水中動画を撮影しました
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